2021.03.25

EXHIBITION 05
INSIDE and OUT ‘enjoy the spring!’
インサイドアンドアウト 2021春and wander journal #22

芽吹きの季節に、山や森から届いた豊かな便り。それを受け取った作家たちがプロダクトやクラフト、音楽やアートなど、思い思いの作品を仕上げて、会場に届けてくれました。 山歩きを思い出させてくれるフードやグッズ。植物の生命力から生まれた色を愛でる抽象画や、香りを愉しむミスト。 会場には朝の森の清々しさを感じられるオリジナルの音楽が流れ、季節の花々が放つ瑞々しい香りが漂います。家の中でも外でも、春の伸びやかな空気は楽しめるはず。 日本各地から集まった“春”に触れに、ピクニック気分でご来場ください。

2021年3月24日(水)~5月16日(日)
12:00 – 19:00 (最終日は17:00までとなります)
東京都渋谷区元代々木町22-8 3F, 4F and wander OUTDOOR GALLERY with PAPERSKY
tel. 03-6407-8179

ORIGINAL MUSIC
「INSIDE and OUT」 青木隼人

音楽家・青木隼人によるオリジナル音楽。「展示のタイトルに触発されて“INSIDE and OUT”と名付けました。朝の森は、外の世界の音。ギターは、僕の内側からの音。それをひとつにして、この曲はできあがりました(青木)」。

手前左から、CD『Echo / Room Echo』¥2,420(税込)、CD『小さな歌』¥2,420(税込)、『MITATE 3』¥2,200(税込)。 奥は額装した絵¥11,000(税込)と大判ポスター「for inside and out」¥33,000(税込)

青木隼人 京都/音楽+絵

COMMENT
今回のイベントのために曲を作りました。山で暮らす友人宅を訪ねた時に、朝の野外で録音したものです。鳥のさえずり、風の音、そしてギター。近くに小川が流れていたので、せせらぎの音もずっと響いています。それを持ち帰って、音を重ねて完成させました。この一年、「外と内」ということを考えることが多くなりました。そのふたつの世界の間は、橋をかけて行ったり来たりしたいのですが、いまの世の中では、それが難しくなっているのを感じています。それでも今回の展示では、音と絵で「内と外」のふたつの世界のあいだに小さな橋をかけてみたいと思っています。5年程前から、とくに朝の時間に日課のように描いてきた絵や、その絵を気軽に飾ってもらえたらと作ったポスター、京都の花屋「みたて」に流れる四季折々の空気を感じながら奏でた音楽を収録したCD『MITATE』シリーズも並びます。一緒にお楽しみください。

PROFILE
あおき・はやと 1978年生まれ。音楽家。ギター演奏を中心に音楽を続ける。自主レーベル「grainfield」から作品をリリース。自身でCDジャケットのデザインを手がけるなど、伸びやかな絵にもファンが多い。ソロでの活動のほか、森ゆに、田辺玄との「みどり」、ベートルズこと渡辺智江とのデュオ「ベーブルース」としても活動中。
http://grainfield.net/

左から、クライミングギアの役目を終えたロープを再生させた「クライミングロープ鍋敷き」¥3,190(税込)と 「クライミングロープコースター」各¥1,496(税込)

Arts and Climbs 岐阜/ロープグッズ

COMMENT
私たちは岐阜の中津川という里山を拠点に、クライミングと芸術の境界を行き来するような、日常生活で気軽に使えるアイテムを制作しています。イベントには、クライミングロープを使ったコースターや鍋敷きをお届けします。クライミングギアの役目を終えたロープを丁寧に洗い、まだ十分に使える部分を再利用して作ったものです。カラフルな刺繍糸でロープをつなぎ合わせ、ところどころにハギレをあててアクセントにしました。“クライミングのパートナーから、日常生活のパートナーへ”。ひとつの道具が新しく生まれ変わることに喜びを感じています。手仕事を大切にしながら作った、少し風変わりなロープグッズを楽しんでもらえたら何よりです。

PROFILE
アーツ・アンド・クライムズ 岐阜県中津川の里山を拠点に活動する、イラストレーターでありクライミングインストラクターの成瀬洋平と、鍛金作家の成瀬恵理が2019年に立ち上げたブランド。クライミングをモチーフにしたプロダクトを制作する。
https://www.edgeandsofa.jp/fs/edgeandsofa/all/gd15990/

徳島の阿波和紙を天然染色で染め分けて製作した作品『Abstract Natural Dyeing』。額装なし¥8,800(税込)〜、額装込み16,500(税込)〜

金井志人 奄美大島/染色

COMMENT
鹿児島にあるセレクトショップ〈OWL〉との協業から生まれた『Abstract Natural Dyeing』を発表します。徳島の阿波和紙を天然染色で染め分けて製作した作品です。奄美の泥染めや草木染め、藍染めの技法によって生まれる植物から採取した色。黄は福木、赤は茜、青は藍、そして茶は泥。それらが混ざり合うことで、ひとつとして同じものがない豊かな色が現れます。このシリーズを始めたきっかけは“色を観賞したい”という率直な思いでした。豊かな自然と四季の移ろいを趣ある言葉で表現できる日本人の色彩感覚。そうした文化に自分なりの敬意と解釈を重ね、観る人の心に色による風景や心情を浮かび上がらせることができたら。そんなことを思いながら制作をしています。

PROFILE
かない・ゆきひと 1979年奄美大島生まれ。染色家。歴史ある奄美大島紬の泥染めを担う「金井工芸」2代目。泥染めをはじめとする天然染色に携わりながら、新しいジャンルへも積極的に挑戦している。伝統的な技法を新たな視点で刷新する姿勢が、多くのアーティストから支持されている。
http://www.kanaikougei.com/

左から、真鍮のボウル皿¥3,080(税込)、アルミの丸皿¥1,430(税込)、銅と真鍮のシェラカップ¥7,700(税込)、奥に吊った「Noah ベル」各¥2,750(税込)、右手前の「葉っぱスプーンとフォーク」¥3,750(税込)

成瀬恵理 岐阜/鍛金

COMMENT
冬がようやく終わりを告げ、春が訪れたことを心から嬉しく思います。今年は特にそう感じました。それは私だけではないはず。これから始まる季節への瑞々しい気持ちを作品に込めました。今回初めて制作したミルクパンやミニフライパン。家でも焚き火でも使えるようにと、本体は銅、持ち手は真鍮で仕上げました。鍛金は、金槌や当て金といった何種類もの道具を使い分けて形を生み出していきます。時間も体力も必要とする技法。だからこそ、少しずつ出来上がっていくそのプロセスを大切にしています。金槌を叩くことでできる、たくさんの槌目。鏨(タガネ)で打ち出した模様。ひとつひとつ手で作るモノにだけ宿る空気を、手にとって感じていただけたら。作り手の気持ちと使い手の気持ちが重なり合う素敵なイベントになることを祈っています。

PROFILE
なるせ・えり 1982年東京生まれ。鍛金作家。美術大学時代に鍛金を学び、卒業後も働きながら創作を続ける。現在は岐阜県中津川の里山を拠点に「Ery」という活動名で鍛金制作やワークショップを行う。昨年は夫の成瀬洋平と、クライミングをモチーフにしたプロダクトブランド「Arts and Climbs」もスタート。
https://itoeri.weebly.com/

観葉植物¥2,750(税込)〜。コルクの台にガラスが乗った一輪挿し 「coruru」¥1,210(税込)〜。木製の台の一輪挿し「baum」¥1,100(税込)〜やグレイで安定感のある形の「glass vase gray」¥1,760(税込)

Forager 東京/花器・ブーケ

COMMENT
お花や植物を身近に感じるきっかけになれたらと、季節の花で組んだブーケや、ハンギングできる室内用の観葉植物、壁に掛けて愉しむスワッグなどをお届けします。初心者でも素敵に生けられる花器や、使い勝手のいい小ぶりな枝切り鋏も並ぶので、ぜひ手にとってみてください。特に花器は、ワイヤー付きで吊り下げられるものや、すっきりとしたフォルムで花が映えるものなど、さまざまに用意するつもりです。なかなか遠くへ出かけられない日々ですが、花を見つめる暮らしには発見が溢れています。旅することと同じくらい豊かな“なにか”を身につけているご自身に気がつくことでしょう。

PROFILE
フォレジャー 2015年より、季節の光と花の作用にフォーカスした花屋〈Forager〉を運営。渋谷の西原と、下北沢に店を構える。ささやかだけれど魅力的な花々を中心に、ジェンダーフリーな花の景色を提案している。
https://forager-tokyo.tumblr.com/

左から、「SUIGEN TEA」各¥1,080(税込)や「芳香蒸留水」¥1,650(税込)、「SUIGEN MIST」20ml/¥2,090(税込)・50ml/¥4,290(税込)、薬草茶「Wild Herb Tea」¥1,080(税込)

SUIGEN 沖縄/ミストスプレー・ハーブティ

COMMENT
〈SUIGEN〉の名前の由来は「水源」です。言葉にする度に大切にしたいと思えるもの、想いを馳せられるものをブランド名にしたいと思い、こう名づけました。豊かな香りの「SUIGEN MIST」は、日常の中で自然を味わいたい時、植物の存在感に支えられたい時におすすめです。やんばるに自生する月桃や沖縄シナモン、自然栽培のレモングラスがふわりと香り、心のバランスを整えてくれるでしょう。また今回は、イベントに合わせて「Wild Herb Tea」を作りました。長年暮らす沖縄と、昨年からもうひとつの拠点となった大分。2つの土地で野草を摘み、その生命力や美しさをそのまま味わえるお茶に仕上げました。植物の生命力は、私たちの体に寄り添い、静かに心身を養ってくれます。私たちが出会った春をみなさまにお届けできるのを楽しみにしています。

PROFILE
スイゲン アントン沙莉が主宰する、植物の生命力を凝縮したプロダクトブランド。幼少期より自然豊かな土地で暮らしながら育んできた感覚や、自身のアレルギーを通して身体と向き合うことで深めてきた経験を生かし、健やかな心身へと導くミストやハーブティーを製作する。現在は沖縄のほかに、大分にも拠点を構え、2つの土地を行き来しながら、活動する。
https://suigen-s.com/

お湯で戻すだけで食べられるトレイルフード。「ミートソースツイスト」や「チキンカレークスクス」 「キーマリッチ」など。各¥1,188(税込)

The Small Twist Trailfoods 山梨/トレイルフード

COMMENT
私たちの拠点は山梨県北杜市です。八ヶ岳で大切に育てられた季節の野菜を丁寧に調理し、長時間かけて乾燥させ、お湯で戻すだけで美味しく食べられるトレイルフードを作っています。例えば鶏の旨みやスパイスの香りが楽しめる「チキンカレークスクス ホット」や、合挽肉と野菜をスパイスを効かせたトマトソースで煮込み、ショートパスタと合わせた「ミートソースツイスト」など。旬の野菜を多く使っているので、季節ごとの微妙な味わいの変化も楽しみのひとつです。コロナ禍でなかなかフィールドに出られない方も多くいらっしゃると思いますが、私たちのトレイルフードで八ヶ岳の空気を感じてもらえたら嬉しいです。一日も早く、皆さんが笑顔で山を歩ける日が来ることを願っています。

PROFILE
ザ・スモールツイスト・トレイルフーズ 主に八ヶ岳で育った季節の野菜で作るトレイルフードのブランド。化学調味料や保存料を使わずに、素材の味を生かして手間暇かけて作った料理を、山やトレイルでも手軽に食べられるようドライフードに仕上げて届けている。主宰するのは料理研究家の山戸ユカ。
https://smalltwist.theshop.jp/

「山のうつわ」は、ナチュラルとブラウン、ブラックの3種。左から、スタッキングできる「山のうつわDISH」3枚セットで¥9,020(税込)、お椀にもなる深さのある「山のうつわ」各¥10,780(税込)

VIVAHDE 東京/木のうつわ

COMMENT
当たり前にしてきたことが出来なくなった一年。それは今までしなかったことを始めるきっかけにもなるはずです。私たちにとっては『INSIDE and OUT』に参加することが新たな試みとなりました。会場に届けるのはVIVAHDEがオリジナルでつくる「山のうつわ」です。素材は国産の栓(セン)の木。石川県の伝統工芸である山中塗の木地師がひとつずつ削り出し、同じく山中塗の職人が食器用ウレタン塗装で仕上げています。軽量でスタッキングでき、熱いものを入れてもハンドルなしで持つことができる。中身が冷めにくいのも木製食器の優れた点です。山で活躍する道具は、きっと日々の暮らしも豊かにしてくれる。行動の変容が求められ活動も制限されていますが、精神は自由です。内と外、季節の移ろい、過去と未来の境界線が不確かな現実ですが、このイベントで楽しみと希望を感じていただけたらと思います。

PROFILE
ヴィヴァフデ 〈VIVAHDE〉とはフィンランド語で「ニュアンス」の意味。ニュアンスのある器と雑貨、オリジナルのアウトドア用品を取り扱うセレクトショップで、1月にオープンした武蔵五日市の店舗では飲食も提供している。
https://vivahde.com/

edit PAPERSKY
text Yuka Uchida
photography Machiko Fukuda